昨年2010年11月にLOCKON Marketing of U.S.A をシリコンバレーに設立してから、10ヶ月が経過しました。以降、現在に至るまで、ほぼ毎月、現地に滞在して事業を推進してきましたので、まとめておこうと思います。
海外展開をはじめる前に、それまでの日本企業がうまくいっていない状況を分析して出した方針としては、自分自身が一生活者となるところから始めようということでした。そこで自ら社会に対して何が出来るかを肌で感じ、その次に組織を作り、その組織をもって世界に通用する製品を企画する。1,2をすっ飛ばして、日本で受け入れられた製品をそのまま売ろうとするところにうまく行かない原因があるのではないかと考えてのことでした。
生活からはじめる。
最初にはじめたことは、レンタカーで行く当てもなく移動したり、いろいろな人と会って食事をしたり、ホテルもちょっと良いところからモーテルまでいろいろと泊まってみたり。ただ、生活をしていました。 この際、現地に15年程、現地に滞在されている日本人の方にメンターとなっていただき、現地のことを効率良く教えていただいたり、キーマンを紹介していただいたり、いろいろな場所につれていっていただいたお陰で、大幅に時間を短縮できました。
そんなことをしているうちに、いろいろなニーズを感じました。また、ニーズも時間を経て変化していきました。 例えば、飲食店に入ると接客レベルが低いということを感じることがありました。日本の感覚では接客レベルが低い=けしからん=改善しろ。→日本のおもてなしの心をコンサルティングしていくサービスはいけるかも!と言う発想になったりもしますが、次第に接客サービスを提供しない店というものが存在することがわかってきます。そもそも接客サービスは提供しないわけなので、レベルは問題になりません。
こうしてニーズを感じては、その背景にあるものに気づき、社会全体でバランスが取れていることに納得すると言ったこと繰り返しでした。そんな中、日本で手がけているECプラットフォーム領域についても見聞きしてきましたが、この分野の可能性を強く感じました。自分達が10年かけて培ってきたB2Bのコマース領域の知見が、話にならないということも無いと感じました。
シリコンバレーの強烈な社会システム
日本から見れば、シリコンバレーもニューヨークもひっくるめて「アメリカ」ですが、ことITに関しては、シリコンバレーは、アメリカはもちろん世界の中でもかなり特殊なエリアです。
今や時価総額世界一のAppleはじめ、Google、Facebook、Twitter、Saleforce、eBayなど、主要なIT関連企業は、すべてこのシリコンバレーというごく限られたエリアに集中するには、やはり理由がありました。経営リソースと言われる、人・金・情報という観点からまとめます。
①人:19世紀半ばゴールドラッシュのあったエリアで、今もチャレンジ精神の溢れる人たちが作った文化が背景にある。そして、スタンフォードやバークレーなどの優れた大学があり、毎年膨大な頭脳が輩出される。また、人材の流動性は高く、必要なときに必要な場所に人が集まる。
②金:日本ではエンジェルと言われてもピンと来ないが、過去の成功者がお金を出す側に回る個人投資家はごまんといるし、ベンチャーキャピタルの数も数えればきりがない。頻繁に企業の売買が行われており投資家にとってはエグジットプランが描きやすく、未上場でも30億円以上調達している会社はいたるところにある。
③情報:主要メディアはもちろん、カンファレンスもある。それよりも、街角のカフェでメディアには載らない生きた情報に触れることができる。
これら①〜③は、今でも十分強力ですが、金がさらに多くの人を世界中から集め、人が集まることでさらに情報が行き交い、さらに優れたサービスを生み出される。そしてまたさらにお金を生む・・・と言ったように、これらが螺旋状になって日々急速に進化しているようです。 なお、このように圧倒的な経営リソースが揃っていますが、顧客はいません。しかし、顧客がいないからこそ、世界で売るために徹底的に差別化することやマーケティング戦略が進化していると感じます。
つまり、シリコンバレーは、それぞれの企業が強いというよりも、企業を大きく育てための社会システムとして優れています。
シリコンバレーはシリコンバレー
そうすると、この社会システムを活用して、企業を成長させたいと思うわけなのですが、日本企業にとっては、それほど簡単なことではありません。
資本の点から言いますと、まず、本社が日本にあるという時点で極めて困難になります。投資家の立場に立てば、身近にいる方を優遇することは当然です。別の問題もあります。エグジットを考えた場合に、シリコンバレーでもIPOは稀でバイアウトが大半です。しかし、日本人組織となるとその後のマネジメントの観点からも買収側にとっても歓迎されないでしょう。 さらに言いますと、シリコンバレーの社会システムは大木を育てること(巨額の赤字を垂れ流しても市場獲得を優先すること)を目的にしています。それに対して、日本では小さくても自生できること(黒字)が期待されますので、どちらで行くかによって、そもそもビジネスモデルが根底から変わってきます。
そして、ベンチャーキャピタルからの資金調達のメリットは、お金を得ることだけではなく、VC-Backedというブランドになり、採用力向上や、メディアへの露出向上、そしてさらなる資金調達へと繋がるアクセルでもあるということです。
このように、この社会システムに入るには、どっぷり入り込む必要があり、片足だけというのは難しそうです。
仲間との挑戦
では、ロックオンがどっぷり行くか?と言うと、可能性はともかく今は否だと考えています。また、ロックオンをバイアウトして、シリコンバレーで起業してはどうか?という意見もいただきましたが、これもやりたいことではありません。
日本で10年の歳月をかけて約50人の仲間やお客様と株主の皆様をはじめ多くの方と一緒にやってきていることは心地良いですし、この社会システムを活用しなくてもやっていける方法はあると思うからです。
当初から想定したことではありますが、これは長い戦いになりそうです。
幸い、こうしたロックオンの挑戦に賛同して、熱い情熱と高い技能を持った人たちが、門を叩いてくれることも増えました。また現地の方との出会いも増えてきています。
まだ見ぬ世界ではありますが、仲間と力をあわせることで、必ず世界で認められるサービスを提供できるものと信じています。
2011.9.16 Mountain Viewにて
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